昨今の原材料費やエネルギー価格、労務費などが上昇する中、中小企業にとって価格交渉や価格転嫁は避けて通れない課題です。
中小企業庁では、2021年9月より毎年3月と9月を「価格交渉促進月間」と設定し、受注企業が、発注企業にどの程度価格交渉・価格転嫁できたかを把握するための調査を実施しています。
今回は、6月21日に公表された中小企業庁が2024年3月に実施した「価格交渉促進月間」のフォローアップ調査結果についてご紹介します。
価格交渉の状況
直近6か月間における価格交渉の状況は次のようになっています。
「価格交渉が行われた」割合は59.4%で、発注企業から交渉の申し入れがあり、価格交渉が行われた割合が増加するなど、価格交渉できる雰囲気がさらに醸成されつつある傾向です。
一方で、「価格交渉を希望したが、交渉が行われなかった」割合は10.3%で前回より増加しており、引き続き労務費指針の徹底等による価格交渉の機運醸成が必要です。
価格転嫁の状況
コスト全体の価格転嫁率は46.1%で、昨年9月より微増しています。
受注企業のうち、コスト増加分を全額価格転嫁できた割合は増加し、一部でも価格転嫁できた割合も増加しました。
しかし、1~3割しか価格転嫁できなかった企業の割合も増加しており、まったく価格転嫁できなかった、減額された企業も約2割存在します。
この結果から「転嫁できた企業」と「できない企業」で二極化の兆しもあり、転嫁対策の徹底が重要なことが分かります。
労務費に関する価格交渉と正当な理由のない原価低減要請
◇今回、初めて調査が行われたのが以下の2つです。
①労務費について価格交渉できたか
②正当な理由のない原価低減要請等により価格転嫁できず、結果、代金が減額となったケース
◇調査結果
①については、価格交渉が行われた企業のうち約7割が、労務費についても価格交渉が実施されたと回答しました。
②については、全体の約1%存在しました。
下請法違反が疑われる事例や、「原価低減要請」に係る振興基準上不適切と思われる事例も存在しており、中小企業庁ではこれらの情報を糸口として、下請法の執行を強化していくとしています。
※下請法とは、親事業者が下請事業者に対して不公正な取引を防ぐための法律です。中小企業を保護し、公正な取引環境を確保することを目的としています。
まとめ
今回の調査結果は、中小企業が直面する現実を浮き彫りにしています。
価格交渉の進展や価格転嫁の改善は見られるものの、依然として課題が多く残っています。
中小企業が健全に成長するためには、発注企業との公正な価格交渉と正当な価格転嫁の実現が不可欠です。
引き続き、労務費指針の徹底や下請法の厳格な運用を通じて、中小企業の経営環境改善に努めていきましょう。