今回は、2024年の春闘における賃上げの動向と中小企業の現状について解説します。
春闘とは?
春闘とは、日本の労働組合が毎年春に行う賃金引き上げや労働条件改善のための交渉を指します。
「春季生活闘争」の略で、1950年代から続く日本の労働運動の一つです。
春闘は労働者の生活向上を目指すだけでなく、企業の成長や経済全体の活性化にも寄与します。
賃金が上がることで消費が促進され、経済の好循環が生まれることが期待されます。
最新の賃上げ率について
2024年の春闘では、日本労働組合総連合会(連合)が4月4日に発表した集計結果によれば、全体の賃上げ率は平均で5.24%と33年ぶりの高水準となりました。
人手不足や物価高騰を背景に賃上げが求められる状況が続いていますが、大企業が積極的に賃上げ策を進める一方、中小企業では賃上げに対する厳しい状況が見えてきます。
中小企業の賃上げは厳しい
帝国データバンクが2024年4月18日に公表した調査によれば、2024年度の賃上げ実施割合は77.0%と高水準ですが、規模別に「賃上げ」する/した企業の割合をみると、「大企業」は77.7%、「中小企業」は77.0%とほぼ同水準となった一方で、「小規模企業」は65.2%という結果で、全体(77.0%)を11.8ポイント下回っています。
「大企業」と「中小企業」の賃上げ実施割合がほぼ同水準となっていても、賃上げの額においては、中小企業は大企業に及びません。
中小企業は、資金的な余裕がないため、大企業ほどの賃上げが難しい現実が浮き彫りになっています。
新卒社員の採用にも企業規模の差が
同調査では、2024年度入社における新卒社員の採用状況についても尋ねており、「採用あり」は45.3%、「採用なし」は53.1%となっています。
これを規模別に「採用あり」の割合をみると、「大企業」は76.2%と全体を約30ポイント上回った一方で、「中小企業」は40.9%、「小規模企業」は23.7%となっており、企業規模別の差が大きいことがわかります。新卒社員の採用においても、中小企業の厳しい現状が見えてきます。
広がる格差と人手不足
同調査では、中小企業からは、「大企業との賃上げ格差が拡大し、人材の確保が一段と困難になっている」との声も聞かれています。
資金的な余裕がないため、賃上げしたくてもできない中小企業が多いのが現状です。
賃上げが進む大企業との賃金格差、またそれによる人手不足はますます深刻化していくものと思われます。
まとめ
今回は、最近の賃上げの動向とそれにまつわる中小企業の状況について解説しました。
このような状況下で中小企業が生き残り、成長するためには、生産性を高めるための様々な施策とともに、他社と差別化した人材確保の方法をあわせて検討していくことが重要となるでしょう。