今回は、退職時の公的保険手続きについて解説します。特に、改正高年齢者雇用安定法が施行されたことで、60歳を迎える人の健康保険について取り扱う機会は増えるでしょう。ぜひ、自社における人事管理の参考としてください。
選択肢は4つ!それぞれの対象者は?
退職にあたっては、公的保険を切り替える手続きが必要となります。選択肢は下記の4つです。
・勤務先の健康保険に加入:雇用延長や再就職の場合
・現在加入している健康保険の任意継続:再就職なしで退職する場合
・国民健康保険に加入:再就職なしで退職し、健康保険を任意継続しない場合
・家族が加入する健康保険の扶養に入る:収入が一定以下または働かない場合
「任意継続」とは退職前に加入していた健康保険に、継続して2年間加入できる制度です。ただし、企業の折半分はなくなり、全額自己負担となります。
扶養に入れば保険料は0になるも、収入が制限される
「保険料額」を基準に考えると、家族の扶養に入れば自己負担は0円となりもっともお得です。しかし、年収が一定以下(60歳以上であれば180万円)の必要があるため、収入や就業機会が限定されます。また、国民健康保険にはそもそも扶養制度がないため、仮に自分が働いて配偶者が働かなかったとしても、2人分の保険料が発生します。
退職者が自分に合った保険を選択するためには、制度内容の理解が不可欠です。
健康保険について正しい知識を伝えよう
企業としては、退職者の進路を踏まえ、公的保険の正確な情報を伝えることが重要です。会社勤めが長い人ほど、公的保険の切り替えが必要なことを知らないケースは多いでしょう。企業側にとって当たり前な基礎知識も、従業員にとっては当たり前ではない場合があります。