中小企業庁では、2021年9月から毎年3月と9月に「価格交渉促進月間」を設け、受注企業が発注企業に対して、価格交渉・転嫁をどの程度実現できているかを調査しています。調査の背景として、原材料費やエネルギー価格、人権費などの上昇に伴い、多くの中小企業が価格交渉や価格転嫁ができる環境を整える必要があることが挙げられます。
2024年9月の調査結果が同年11月29日に発表され、価格交渉・転嫁の現状が明らかになりました。それでは、調査結果のポイントをトピックごとにご紹介します。
価格交渉の状況
直近6か月間における「発注側企業からの申し入れ」による価格交渉の割合は28.3%で、前回より約2ポイント増加。また、全体の価格交渉実施率も86.4%と約1ポイント改善しました。一方で、「交渉が行われなかった」との回答が約15%存在し、依然として受注企業が交渉を望んでも実現しないケースがあることが課題です。今後は労務費指針などの徹底を通じて、さらなる交渉環境の整備が求められます。
価格転嫁の状況
全体の価格転嫁率は49.7%で、2024年3月より約3ポイント上昇。 「全額転嫁できた」割合は25.5%、 「一部でも転嫁できた」割合は79.9%となり、いずれも改善傾向が見られました。しかし、「転嫁できた企業」と「できなかった企業」の二極化が進行している点が懸念されます。この問題を解決するには、受注企業の負担を軽減するための転嫁対策を徹底する必要があります。
発注側企業による説明の状況
今回初めて調査された、価格転嫁に関する発注側企業による説明では、価格転嫁が全額実現できなかった企業(全体の37.8%)のうち、「納得できる説明があった」と回答したのは約6割。一方で、「納得できない説明」または「説明がなかった」とする回答が約4割を占めました。発注側企業には、交渉の場を設けるだけでなく、コスト上昇に関する十分で納得のいく説明を行う姿勢が求められています。
まとめ
今回の調査結果から、価格交渉や転嫁が一定の改善を見せつつも、交渉が進まない企業や転嫁が実現しないケースが依然として課題であることが分かりました。発注側企業が十分な説明責任を果たし、受注側企業が納得できる回答をすることが求められます。また、交渉を活性化し、転嫁を進める具体的な支援策も欠かせません。適切な価格交渉の実現が、持続可能な事業運営の鍵となるでしょう。